1-click Award

審査員インタビュー

茂出木龍太
1.最近気になっているWEBのキャンペーンやサイト、サービスを教えてください。 

もしかすると皆さんもよく使っていらっしゃるかもしれないですけど、twitterが好きで、よく使ってますね。今までは何か言いたい人とそれを聞く人とが、なんらかのルールに従ってつながっていくメディアがほとんどだったと思うんですけど、twitterはお互いが直接やりとりできて、つながっていく。それがすごく面白いなあと思いますね。ここ数ヶ月くらいでぐんとメディアっぽくなってきましたし。キャンペーンに取り込もうという人達もいますけど、もっと大きな枠組みで変わってきたらいいなと思っていたりします。
もう1つは、インタラクティブ性のあるミュージックビデオにちょっと最近注目しています。カンヌでも、Labuatというスペインのシンガーのミュージックビデオが入賞していて、去年はレディオヘッドもそういうことをやっています。確実に増えてきていますね。これらは扱われ方が面白くて、あるサイトにみんなが見に来るのではなく、いろんなところに置かれていて、手軽にアーティストの世界観を楽しめるようになっているのが面白いと思います。

────インタラクティブ性のあるPVというのは、ユーザー側でいじれるのですか?

最近見たヤツで言うと、Cold War kidsというのがあります。ボーカルとキーボード、ベース、ドラムスの4人が別のカメラで撮られていて、その楽器をクリックするたびに変えられるんですね。ボーカルなら、しっとり歌うとか、パンクっぽく歌うとかいう具合に。ドラムだったら、普通にドラムを叩くか、リズムマシーンを使うか。ベースだったら、ウッドベースやエレキベースなんて感じです。4人ともそれぞれ何種類かに変えられるので、自分の好きな組み合わせを楽しめる。そうして触っていくと、その音楽と向き合っている時間が自然と生まれているんですね。従来のPVは「ながら」で見ていることが多いと思うんですけど、クリックしながらずっと見ているのは、それとはちょっと違う行為だと感じます。

────ライブじゃないのに、能動的に見ているということですね。

触っているうちにその曲を何度も聴いたりするわけですから、結果としてプロモーションとして成功していると思いますね。


2.広告を作るときに気をつけていることを教えてください。

あまり広いコミュニケーションは避けられるといいかなと思っています。できるだけ特定の属性を持っている人達に対して、深いコミュニケーションをしていける場とかメッセージを作りたいですね。とはいえ、広いターゲットに何かを伝えたいと言うリクエストも多いです。その時に僕が提案するのは、広いコミュニケーションを1つだけドーンと用意するのではなくて、狭いコミュニケーションをたくさん用意しましょうということ。Webって独りで見ることが多いですから、媒体で言うとラジオなんかもそうかもしれないですけど、そういう状況で説得力のある、向き合っていてもおかしくない場作りをしていきたいです。商品広告でも、単に「こういうものを作りました!」ではなくて、「あなたの生活に合っていますか?」ということを問うていけるといいかなと思っています。

それから、インターネット上で話題になるのもうれしいのですが、普段の暮らしの中で話題になるようなキャンペーンができたらいいと思いますね。たとえば、お母さん達がお茶の間で「あれ見た?」とか、お父さんたちが居酒屋で「あれ見た?」と話してくれるのが目標です。はてブで話題になったとか、deliciousでカウントがつくのももちろんうれしいですけど、効果として僕らが直接見えなくても、新橋の飲み屋で、そのサイトをネタに話が弾んでいるような状況ができればいいなとは思っていて、そういう絵を思い浮かべながら作っているところはあります。

────そういうことが成功したと思える仕事はありますか?

昨年、今年と年賀状のプロモーションサイト(郵便年賀.jp)を作っているのですが、昨年はこのWebサイトで打ち出したことが暮らしの中で多少は話題になりました。デザイン上の工夫もしましたし、いろんな人に刺さるように、たくさんの企画を用意しました。単に年賀状を買ってくださいというだけでなく、年賀状を作るときに楽しいツールをたくさん作ったんですね。たとえば、自分の写真をアップロードして宇宙飛行士などの写真と合成できる「なりきり合成ツール」だとか、パーツを組み合わせて自分に似た顔を作れる「似顔絵ツール」、年賀状作成に特化したグラフィックツールなどなど。サイト上で楽しめるだけでなく、持って帰ってもらって自分の年賀状を作るためのツールをたくさん用意しました。 このサイトについては、いろんなブログで取り上げられてもらったのもうれしかったのですが、僕が作ったとはまったく知らない僕の叔父から「こういうツールがあってさ、便利なんだよね」という連絡が入って(笑)、意外な方面からも役に立っていることを実感できましたね。今年もさらに良いものを作っていきたいですし、他のサイトでも同様の工夫ができたらいいなと思っています。 テレビCMでは普通ですけど、つい人に言いたくなっちゃう力をWeb上のコミュニケーションからも出していきたいですね。

────そのために今、Webに足りないものは何でしょうか?

サイト単体でのコミュニケーションが多い気がして、それがもったいないなと思います。新しい試みや面白いルールでコミュニケーションを取っている場はあるんですけど、それがそこだけで終わっちゃっていることが多いのですね。それぞれが内輪でやっている。twitterはそれを壊しそうな気がしています。それが壊れたら、Webがさらに現実社会に近づいてくるでしょうね。そういう意味で、さきほどお伝えしたインタラクティブなミュージックビデオも面白くて、それと同じように人が行く先々、いろいろな場で同じものを見れるようになれば、これからWeb発のムーブメントも起こしやすくなってくるでしょう。


3.1-click Awardで「こんな作品が見たい!」というものは何でしょうか?

このAwardの面白さは、サイトの体をなしていなくてもいいということだと思います。その労力を割く代わりに、それぞれのアイデアにあった「かたち」を作って欲しいですね。最適な規模で、アイデアを直接楽しめるようになっているといいなあと思います。どうしても、サイトの体をなすためにはお決まりで付けていかなくちゃいけないものがありますけど、それを取っ払って、コアの部分だけを表現してもらえたらいいんじゃないでしょうか。

────最初は何だこれは?みたいなものがあってもいいということですよね。

とはいえ、「マウスインタラクションでできること」というのがいい意味で縛りになっていますよね。短歌とか川柳に似た感じで、ストイックなルールの中で、あとは自分のセンスで戦っていくというのが、面白いですよね。

────昨年は、マウスをさかさまにして使う作品(ころころ)もありました。

そうそう。そういうトリッキーなものもあっていいとおもうし、電車の作品(EXPRESSCOPE)ではスクロールバーという普段よく使うツールを電車の流れに上手に使っていましたよね。あれも印象的でした。


4.では、最後に応募者へのメッセージをお願いします。

表現できる場として、とてもおもしろいところだと思います。個人がビジュアルを使って表現する場として、1-click Awardを上手に利用してもらえればいいと思いますね。面白い作品にたくさん触れられるとうれしいです。